BFS工法
埋戻しの重要性
現在、既存杭の埋戻し工事を取り巻く環境は大きく変化しており、大きな転換期を迎えようとしています。
過去30年近くにわたり、埋戻し工法の施工品質に起因するトラブルが数多く発生しています。
杭抜き跡の不確実な埋戻しが原因で起こるトラブルとして、周辺地盤の地盤沈下、新築工事における新設杭の施工品質や工期への悪影響、地盤汚染リスクが挙げられます。
従来工法の問題点
従来工法は、杭孔上部からのセメント系充填剤の注入が主流ですが、地盤内における空隙や軟弱部の発生など、杭孔の深さ方向に不均一な埋戻しになることが多く指摘されています。これらは地盤沈下や強度不足の原因となり、新設杭の打設時に傾斜を招きます。さらには地盤汚染等の問題もあります。
① 空隙発生
セメント注入時の空気流入や孔側面の壁の崩落によって、孔内に空隙が発生する。
② 軟弱部の発生
地下水の侵入やセメントと地盤内の水分が分離することで、軟弱部が発生する。
③ 地盤汚染
セメント注入により地盤がアルカリ性になる。六価クロムが溶出する恐れがある。
こうした問題を背景として、構造物の解体に伴う基礎杭撤去工事において、杭抜き孔の確実な埋戻しが近年重要視されています。
BFS工法は、埋戻し不良や地盤汚染問題を解消する「天然土による埋戻し技術」です。
BFS工法の特徴
BFS工法は土粒子間の空隙を排除して密度と強度を高めることを基本原理としており、投入した天然土をBFS工法専用ドリルにより強い力で圧縮し、締め固めながら、杭抜き跡を埋め戻します。ドリルを回転させながら、天然土を地上から螺旋ブレードに徐々に載せ、先端の押圧ブレードに送り込んでいきます。ドリル先端には特殊な形状をした2枚の押圧ブレードを取り付けており、それらを回転させることによって、地上から投入する天然土と周辺の地盤を鉛直および水平方向に大きな力で圧縮できます。
従来工法では杭抜き跡へセメント成分を混入するため、地盤がアルカリ性を呈することや六価クロムの溶出リスクが高まる等地盤環境問題が懸念されています。BFS工法は、セメントを使用せず天然材料である土砂のみを充填剤として使用するため、地盤汚染リスクのない環境保全に適した埋戻し工法です。
セメント成分を含む充填剤を使用した従来工法は、水とセメントの材料分離により深度方向によって強度が不均一になる可能性がありますが、BFS工法は杭孔最深部まで専用ドリルを貫入し締め固めながら埋め戻すため、杭孔の深さに沿った均一な埋戻しが可能です。
BFS 工法の施工にはアースオーガ搭載機と油圧ショベルのみを用いるため、狭い現場への適用が可能です。電気も水も使用しない上、プラントなどの設備も不要なため、現場への適用性および施工性が非常に高い工法です。
BFS工法は天然材料である土のみを埋戻し材として使用するため、固化材を使用した従来工法で必須とされる養生期間が不要です。天然土を投入し、専用ドリルで締め固めた時点で埋戻し工事完了となるため、工期短縮を図ることができます。
BFS工法では、杭孔が崩れている場合でも適用可能です。杭孔が崩れている場合や自立していない場合は、専用ドリルを逆回転させながら杭孔に貫入します。逆回転させながら貫入することで、地盤を水平方向に転圧しながら最深部まで専用ドリルを貫入させることができます。最深部まで貫入した後は、通常の施工手順に従って埋戻しをします。
土砂のみを使用した従来の埋戻し方法では杭孔上部から土砂を投入し、地表部に到達したところで埋戻し完了としています。しかし、こうした埋戻し方法ではのちに地盤沈下が発生する可能性が非常に高く、再工事が必要となります。BFS工法では埋戻し不良の修復も可能です。土砂のみならずセメントミルクや流動化処理土による埋戻し不良にも適用可能です。
施工プロセス
BFS工法は、専用ドリルを掘削時とは逆回転させ、杭孔最深部から強力な締固めを行うことで、土粒子間の空隙を排除し、埋戻し孔の密度と強度を高めることを基本原理としています。
- 天然土を油圧ショベルなどで杭抜き孔に投入します。
- アースオーガーを用いて、専用ドリルを杭抜き孔に挿入します。
- 専用ドリルを掘削時と逆回転させ、埋戻し土を鉛直・水平方向に締め固めます。
- 締固めが限界に達すると、その反力でドリルが徐々に上昇します。
- 専用ドリルを回転させながら追加の土を送り込みます。土はオーガーの逆回転する螺旋ブレードを下って専用ドリルに達します。
- 地表面高さまで締固めが完了したら、専用ドリルを杭孔から外します。
- 地表面を油圧ショベルなどで突固めて、施工完了となります。
性能評価試験
試験概要
- 掘削用ドリルで地盤を掘削し、杭抜き工事における杭抜き跡地盤を再現
- 掘削前の地盤中心点にてSWS試験を実施し、原地盤(関東ローム)のN値を測定
- 埋戻し土には、千葉県君津市産の山砂と現地土の混合土を使用(配合比2:1)
- 埋戻し処理後の地盤の中心点にてSWS試験を実施し、原地盤のN値と比較することで性能を評価
試験結果
- 原地盤のN値は3~6程度であり、BFS工法による埋戻し地盤の換算N値は2~4程度であった
- 埋戻し処理後1ヶ月後に地表面の経過観察により、埋戻し処理後の地盤に沈下が発生していないことを確認した
性能評価
- 本来締固めが困難な杭抜き跡という狭隘な空間において、BFS工法により十分な締固め転圧が行え、地盤環境にも配慮した均質な埋戻し処理が実施できた
Q&A
埋戻し可能な孔径はどれくらい?
ドリル径φ300~1000mmの専用ドリルをφ100mm単位でご用意しております。適用孔系はφ1200mm以下です。
埋戻し可能な深度は何m?
BFS工法による埋戻し工事では、対象杭長に制限を設けていません。BFS工法はスパイラル状のロッドの先端に専用ドリルを装着するため、スパイラル状のロッドを延長することで任意の杭長に対応可能です。
施工速度は?
BFS工法では、概算で1日当たり100mの埋戻し処理が可能です。たとえば杭長が10mの場合、1日に10本の埋戻しが可能です。
地下水がある場合でも適用できる?
性能評価試験および過去実績では地下水がある場合でも問題なく埋戻しができることを確認しています。ただし、地下に流水がある地盤では締固めが困難なため適用不可です。
BFS工法の機材や材料
従来工法で必要とされる、水、セメントプラントなどは使用しません。
施工機材
アースオーガー
建柱車や杭抜き機など、アースオーガー搭載機であればいずれも使用できます。(トルク:6~16kN m 荷重:20~50kN)
専用ドリル
回転により鉛直・水平方向の締固めができる特殊なドリルです。
(ドリル径:φ300〜1000mm 適用穴径:φ1200mm以下)
※面的埋戻しの場合はラップ方式にて施工可能です。
施工材料
・使用土…現場発生土+山砂などの天然土 ※砂分が40%以上となるよう配合
取得特許
特許第7448110号「地盤復旧オーガー及び地盤復旧方法」
意匠登録1768210号「地盤復旧オーガー」
その他数件特許出願中
専用ドリルの
レンタル・リース
本工法にて使用する専用ドリルのレンタル・リース事業を展開しております。
専用ドリルはレンタル可能です。現場にて技術指導のサポートも行っております。アースオーガー経験者なら1日程度で技術習得可能です。