都市開発が進むなか、建物やインフラの安全性にとって、地盤沈下は見過ごせない問題となっています。特に、日本のように軟弱地盤が広がる地域では、地盤沈下が社会問題として取り上げられることも少なくありません。こうした背景を踏まえ、地盤沈下の一種である圧密沈下がどのように発生するのかメカニズムを解説します。
圧密沈下とは?
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圧密沈下とは、地盤が長期にわたって徐々に沈下する現象のことです。圧密とは、土に長期間荷重がかかることで土粒子間に存在する水や空気が排出され、土が圧縮される現象のことです。
地盤は土、空気、水で構成されていますが、その割合は地盤によって異なります。例えば、粘性土など粒径の小さな土粒子から成る地盤は含水量が高く、また、枯れ葉や植物の残骸から成る腐植土は、有機物が多く含まれているため間隙(空気や水)が多いのが特徴です。
こうした間隙の多い地盤に、建物など上からの荷重が加わることで、地中の空気や水が徐々に排出され、排出された空気や水の体積分、地盤が沈み込み、沈下が起こります。
この現象は短期間では目立ちにくく、数ヶ月から数十年といった長期にわたってゆっくりと進行し、建物の傾きや道路の陥没などを引き起こします。
圧密沈下はなぜ粘性土地盤で起きやすいのか?粘性土の特徴
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含水量が多い
まず、粘性土の特徴として含水量の多さが挙げられます。一般に、自然状態の砂質土の含水比は5~30%、粘性土は30~80%とされており、粘性土は非常に多くの水を含むことができます。そのため砂には見られないような粘土特有の現象を引き起こします。
圧密沈下は土中に含まれる水が排出されることで地盤が沈下する現象のため、含水量が多く、飽和状態にある粘性土では圧密沈下が発生しやすくなります。
透水性が低い
粘性土は土粒子が極めて小さく、隙間も狭いため、土中に含まれる水が移動するのに時間がかかります(透水性が低い)。このため、荷重がかかった後、水はゆっくりと排出され、沈下に数十年もの時を要することがあります。
圧縮特性
粘性土の粒子は非常に微細で、粒子間の隙間が多いのが特徴です。特に、腐植土などの有機質粘土は土粒子間の隙間(水や空気)が多く、外力が加わることで大きく圧縮し、荷重に対する沈下量が大きくなります。
また、粘性土の土粒子はその表面に負の電荷を帯びているため、反対に正の電荷を帯びた粒子を引き付けやすく、粒子同士がゆるく結びついた構造になっています。しかし圧力が加わるとこの結びつきが崩れ、粒子の再配列が起き、より密に詰まるようにして体積が収縮します。
圧密履歴
過圧密粘土と正規圧密粘土の違いも圧密沈下の進行に影響を与えます。地盤にかかる荷重は通常、上に新たな土が堆積することで増加していきます。
過去に現在の荷重よりも大きな力を受けたことがある地盤は、過圧密状態にあります。例えば、氷河期に厚い氷がのり、一時的に大きな荷重が加わった場合、現在その地盤にかかる荷重は、氷河期より小さくなっています。このような粘性土地盤は、すでにある程度圧縮されているため、新たな荷重を受けても沈下が比較的少ない傾向にあります。
一方、自然堆積したばかりの粘性土は、現在の荷重がこれまでの最大であり、ほとんど圧縮されていないため、新たな荷重によって大きな沈下を引き起こす可能性が高くなります。比較的新しく、大きな地殻変動を受けていない粘性土地盤では、こうした正規圧密状態が一般的です。
排水条件
粘性土の特性に限らず、地盤の排水条件も圧密沈下の進行速度を左右します。粘性土地盤が地下水位の高い環境にある場合、間隙水の排出がさらに遅れ、圧密沈下の期間が長引くことがあります。逆に、排水条件が良好な場合は、ある程度速やかに水が排出され、沈下の進行も早まります。
さいごに
このように、粘性土地盤での圧密沈下の発生には、含水量、透水性、圧縮特性、圧密履歴、排水条件といった要因が複雑に関係しています。そのため、粘性土地盤の上に構造物を建設する際には、事前の地盤調査と適切な地盤改良対策が不可欠となります。
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