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コラム

なぜ道路陥没は起きるのか?

道路陥没イメージ

昨今道路陥没のニュースが相次ぎ、道路の安全性が不安視されていますが、陥没の発生メカニズムは人工的要因と自然的要因に大分されます。今回は、近年実際に発生した事例をもとに人工的要因としてケース1とケース2、そして自然的要因としてケース3を例に挙げ、陥没がなぜ起こるのかを解説していきます。

 

道路陥没の発生件数

国土交通省の発表によると、令和4年度の道路陥没発生件数は全国で年間およそ10,000件にのぼります。年々少しずつ発生件数は増えており、そのうち70%以上が道路排水施設や共同溝、下水管などを要因として発生しています(引用:国土交通省ホームページ)。

ケース1. 地中管の損傷による陥没

広島で発生した道路陥没

広島で発生した道路陥没

水道管の損傷に伴う陥没

水道管の損傷による陥没

2024年9月26日、広島市街で大規模な道路陥没が発生しました。幅15mの道路が長さ40mにわたり陥没し、周囲の建物は傾き、ひびが入るなどの被害が報告されています。

広島市の発表によると、陥没発生現場では大雨対策として雨水管掘削工事を実施しており、陥没発生とほぼ同時に地下のトンネル内部で水が出てきたことがわかっています。現場では水道管の破裂も確認されていましたが、広島市は、雨水管の工事は地下深くで行われていたため、水道管の水とは考えにくいとして、工事付近の地中に空洞あるいは水がたまっていた可能性を示唆しています。水道管の破裂に関しては、雨水管掘削工事に使用していたシールドマシンの振動で周囲の地盤が揺れ、水道管を支えていた周囲の地盤がゆるんだことで、水道管がたわみ破損したのではないか、という専門家の見解もあります。

広島のケースは地下掘削工事と地中管破損による複合的要因のようにも思えますが、現在日本では水道管などの地中管の老朽化を原因とした陥没が多発しています。老朽化した水道管にひびが入ると管内の水が地中に漏れ出し、滲み出した水は土とともに流れ、地盤内に空洞を生成します。そうして形成された空洞箇所が上部からの重さに耐えきれず陥没を発生させます。

老朽化した水道管の数

水道管の法定耐用年数は40年とされており、高度経済成長期に整備された管路の更新工事が進んでいないのが現状です。国土交通省によると、令和2年度末時点で全国の水道管のうち20.6%が耐用年数を超えているとされています(引用:国土交通省ホームページ)。当時設置された水道管は現在のものに比べ、耐震性が弱く更新が進まないまま地震が発生すると水道管破裂などの被害発生の要因にもなるため、早急な更新工事の必要があります。

 

ケース2. トンネルなどの地下掘削工事の影響による陥没

地下掘削工事による陥没

シールドマシンなどの地下掘削工事による陥没

2020年10月18日、東京都調布市の住宅街で幅5m、深さ5mほどの道路陥没が生じました。周囲の住宅では壁や基礎に亀裂が確認され、陥没発生後には12軒が転居し、建物を解体しました。当時、現場近くでは地下47mの深さで東京外かく環状道路の大規模な地下トンネル工事を実施していました。陥没発生後、工事を担当していたNEXCO東日本が現場8地点でボーリング調査や音波を使った調査を実施し、地質や地盤の固さを調べた結果、陥没が発生した地盤は流動化しやすい層が連続する特殊な地盤だったと発表しました。その上で、シールドマシンによる掘削工事が陥没の要因の一つである可能性が高いと推定しました。

 

都市部では地下空間の有効活用を目的として、日々多くの地下トンネル掘削工事が進められていますが、事前の調査が不十分であったり、設計通りの施工が実施されずに掘削しすぎたりすると周辺地盤に影響を与え、掘削上部の地盤の崩落が発生し、ひいては地上部の陥没に至ることもあります。

 

ケース3. 自然的原因による陥没

自然的原因による陥没

地下水浸透による空洞の生成、ひいては陥没の発生

これまでケース1と2では人工的な要因による陥没発生事例を挙げましたが、自然現象によって陥没が発生するケースもあります。地下水の浸透や水みちとよばれる地下水の流動経路の発生によって空洞が発生し、その後の降雨や地震によって陥没につながることがあります。

 

2009年4月、北海道胆振管内安平町ののゴルフ場でフェアウェーの陥没した穴に転落し利用者が一名死亡した事故がありました。穴の大きさは直径約2m、深さ約5mで中には水が溜まっていました。この陥没は地下水の浸透により地盤が浸食され、水みちができ、その結果、地盤内が空洞化して発生したと考えれています。

 

また、石灰岩など水に溶けやすい岩石が浸食されて地中に空洞が生成されることもあります。代表的な例が鍾乳洞です。鍾乳洞は石灰岩のすき間に弱酸性の雨水が入り込み空洞が生成されることによって生じる洞窟です。 

さいごに

ご紹介した通り、道路陥没は人工的要因と自然的要因に大別されますが、近年、地下工事や地中管の影響による事例が多く報道されています。老朽化した地下埋設管は陥没を誘発するだけでなく、私たちのライフラインに直結する問題のため早急な更新工事が不可欠です。地盤内は目に見えないため、陥没が発生してから地下で空洞が生じていたことが初めて判明することも多々あります。現在ではレーダー技術などにより地盤内部の状態を確認できる調査手法も開発されていますが、さらなる技術開発や定期的な地盤調査の実施が重要といえます。

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