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コラム

埋戻し工事の重要性と工法の種類

埋戻しイメージ図

前回のコラムでは杭抜き工事の重要性と工法の種類をご紹介しました。今回は、杭を抜いた後に行う埋戻し工事について解説していきます。以前のコラムでも、簡単に埋戻しの方法をご紹介しましたが(杭引抜き孔の埋戻しの重要性)、今回はより詳しく埋戻し工法の種類を施工手順も踏まえてご紹介していきます。

 

埋戻し工事の重要性

工事風景

杭を引き抜いた後は、引抜き孔を埋め戻す必要があります。この埋戻し工事の品質がその後の地盤状態に直結するため、解体工事においては、適切な埋戻しの実施が非常に重要となります。地盤の強度は高ければ高いほどいいと思われるかもしれませんが、埋戻しにおいては周辺地盤と同程度の強度に地盤を”復旧”させることが何よりも重要です。

 

埋戻し部の強度不足については、降雨や地震の影響で地盤沈下が発生することがあるため、不適切であることは明らかですが、周辺地盤に比べ埋戻し部の強度を極端に上げてしまうと、新設杭の打設に影響を与えてしまいます(詳しくは天然土による埋戻し技術「BFS工法」をご参照ください。)。一度手を加えられた地盤を元通りにするのは厳密にいえば不可能ですが、建築物解体後の新設工事のためにはできる限り原状復旧を実現させるのが理想です。

 

埋戻し工法の種類

埋戻し_土
土による埋戻し

土を使用した埋戻しは、セメントミルクや流動化処理土に比べ安価なため、コストを抑えたい場合によく採用されます。しかし、埋戻しの際の締固めが困難であることから、安定した強度を確保できないという懸念があります。イメージしていただければ分かると思いますが、杭抜き後の孔に上から土を落とし入れただけで締固めを行わないと、埋戻し部は周辺地盤に比べ密度や強度が低い状態となります。そこに雨が降ったり、地震が発生したり、あるいは時間経過しただけで地盤は沈下し、陥没が発生してしまいます。

 

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

流動化処理土

埋戻し_流動化処理土_杭引抜き時に上から
杭引抜き時に上から注入
埋戻し_流動化処理土_杭引抜き後に上から
杭引抜き後に上から注入
埋戻し_流動化処理土_杭引抜き後に下から
杭引抜き後に下から注入

流動化処理土は、建設発生土と水とセメント系固化材を混ぜて作る充填材です。建設発生土を用いるため、リサイクル材としての利点があります。どろどろと流動性のある流動化処理土は、狭い空間への流し込みが可能なため、締固めが困難な現場への適用性が高いです。

 

しかし、流動化処理土は外部施設からの搬入とる上、固化作用の関係から搬入時間に制限があります。そのため、使用できる現場は限られ、施工状況に合わせての打設が難しいという課題があります。その他にも、セメントに含まれる六価クロムという有害物質が水和反応により地盤に溶出するリスクが懸念されています。

 

杭抜き後の地盤内には地下水やケーシング掘削時に使用した水が存在するため、埋戻し孔の内部にはほとんどの場合、泥水が溜まっています。こうした杭抜き孔に流動化処理土を使用して埋戻しをすると、流動化処理土と泥水の材料分離が起こる可能性があります。材料が分離した状態だと泥水部分が固まらず、固化不良が生じてしまうため、流動化処理土注入後には孔内を攪拌し、均一性を高める必要があります。

 

泥水の他にも、埋戻しの品質に影響を与える要因として、孔壁崩落が挙げられます。杭の引抜き時、孔内側面の土が崩れ、ところどころ孔を塞いでしまうような状態になることがあります。こうした杭抜き孔に上から流動化処理土を注入すると、崩落部より上部分にしか充填材が流し込まれず、崩落部以下が空洞のまま孔内底部まで充填材が到達しない可能性があります。こうした埋戻し不良を防ぐためにも、杭孔の下から充填材を注入するほうが確実といえます。

 

セメントミルク

埋戻し_セメントミルク_杭引抜き時に上から
杭引抜き時に上から注入
埋戻し_セメントミルク_杭引抜き後に上から
杭引抜き後に上から注入
埋戻し_セメントミルク_杭引抜き時に下から
杭引抜き時に下から注入
埋戻し_セメントミルク_杭引抜き後に下から
杭引抜き後に下から注入

セメントミルクは、水とセメントを混ぜた充填材です。流動化処理土同様、液体状であるため狭い空間への流し込みが可能です。また、配合するセメントの割合によって強度の調整も容易にできる上、汎用のプラント設備で作業できるため、現場に合わせて適宜作製することが可能です。セメントミルク製造の際には、杭抜き孔の内部に存在する地下水やケーシング掘削時に使用した水を考慮に入れた上で適切な強度が発揮できるようセメントミルクの配合を調整します。

 

しかし、流動化処理土同様、セメントに含まれる六価クロムの溶出リスクがあるため、六価クロムが規定値内に収まるようセメントミルクを製造する必要があります。

 

セメントミルク投入後の攪拌についても流動化処理土同様、材料分離や孔壁崩落による空隙の発生を防ぐために、充填材注入後の攪拌が推奨されます。また、杭孔の最深部より充填材を注入することで、埋戻し部の空隙発生を防ぐことができます。

 

さいごに

前回の杭抜きに引き続き、今回のコラムでは埋戻しについて解説しました。埋戻しは特に明確な基準が定められておらず、使用材料や埋戻し方法、品質管理など、現場ごとの判断に委ねられることが多いのが現状です。それぞれの工法のメリット、デメリットを理解した上で、現場ごとに最適な埋戻し工法を選択することが重要です。

 

当社では、これまで締固めが困難とされていた土による埋戻しにおいて、締固めを可能にした天然土による埋戻し技術「BFS工法」を開発しました。従来工法の問題点であった地盤汚染リスクを解消するだけでなく、崩落した杭孔への適用も可能な上、地盤沈下が発生した埋戻し不良の修復も可能です。セメント不使用の工法をお探しの方、埋戻し不良でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

 

関連事業

既存杭引抜き孔などの狭隘な空間に天然土を投入し、専用ドリルで強力に締め固めることで、天然の地盤により近い高品質な埋戻しを実現する工法です。

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