今回は土木工事にも使用される材料、ベントナイトについて解説します。土木建築に限らず、さまざま分野において活用されるベントナイトについて、その特徴、起源、用途をご紹介します。
ベントナイトとは?
ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とした粘土鉱物です。モンモリロナイトは非常に薄い薄片状の層が積み重なって1つの鉱物粒子を構成しています。層の間に多くの水分を吸収して膨らむ性質を持ち、これを膨潤性と呼びます。膨潤性はモンモリロナイトの最も大きな特徴です。また、水分を取り込み粘り気が出る増粘性も持ち合わせており、これらの性質を利用して様々な用途に使用されています。
さらに、モンモリロナイト粒子を構成する層間の面は、マイナスの電荷を帯びているため、層間に各種陽イオンを取り込みやすい吸着性を有しています。モンモリロナイトの場合、層間陽イオンが他の陽イオンと容易に交換可能なため、陽イオン交換性があるといわれます。
ベントナイトの起源と産地
ベントナイトという名称は、アメリカのワイオミング州北東部にあるフォートベントン層から産出された粘土に対して命名されたものです。およそ1億年前の白亜紀、現在のアメリカ西海岸は海に沈んでいました。その頃起きた火山噴火により、火山灰が海底に堆積し、海のミネラルや地下の高い温度、圧力、熱水などの作用を受けてベントナイトが生成したと考えられています。
ベントナイトは、アメリカで最も多く採掘され、その他ヨーロッパ、中国など世界各地で採掘されています。日本国内では、青森、宮城、山形、新潟、群馬、岡山、島根などで産出されています。
ベントナイトの使用用途
ベントナイトの使用用途は土木工事、鋳型、陶磁器、農薬など多岐にわたり、精製ベントナイトは化粧品や医薬品としても使用されています。こうした広い使用用途から、ベントナイトは「1,000の用途を持つ粘土」といわれており、様々な業界で活用されています。
土木工事…基礎工事やボーリング、止水材として利用される。
鋳型…鋳造時の型作りに使用され、型の安定性や仕上がりの精度を向上させる。
陶磁器…粘結剤として粘土材料を一体化させたり、釉薬の沈殿を調整する。
農薬…農薬の有効成分を広げるための基盤や、土壌改良材に使用される。
猫砂…高い吸収性と増粘性が猫砂に利用される。
化粧品…吸着効果を活用し、毛穴の汚れや皮脂を除去する。
医薬品…薬剤の安定性向上や毒素の吸着に利用される。
土木建築分野で使われるベントナイト
土木工事では、基礎工事用泥水によくベントナイトが使われます。杭打ち工事の際、杭孔の崩壊を防ぐために、ベントナイトを使用した安定液を孔内に注入し、そのどろっとした粘性を利用して孔壁を抑えます。
ボーリングをする際にも、ベントナイトと水を混合したベントナイト泥水で孔壁の崩壊を防止します。また、高粘性の泥水を使用することで、孔内の掘りくずを泥水とともに地上まで上げることができます。
その他、止水材としてもベントナイトは使用されています。ベントナイトは水を吸収して膨張するため、コンクリートの継ぎ目に使用することで、コンクリート硬化時の収縮による微細な間隙を埋め、水の浸入を防ぎます。また、池の漏水防止にベントナイトを池底に敷いたり、新設池の場合は堤体にベントナイトシートを敷き、止水を図る工法もあります。
このように土木工事においても多用されるベントナイトですが、ベントナイトを含む汚泥は産業廃棄物に指定されているため、廃棄の際は適切な処理が必要です。
さいごに
今回はさまざまな産業で活用される天然鉱石、ベントナイトについて紹介しました。世界各地で採掘され、重宝される鉱石ですが、無限に湧き出てくるわけではありません。限られた資源をより有効的に利用できるよう、日々研究、模索されています。
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