前回(杭打ち工事とは?場所打ち杭工法の種類)のコラムに引き続き、今回は既製杭の杭打ち工法について解説します。
既製杭工法の種類
杭打ち工法の種類は場所打ち杭用の工法と既製杭用の工法に大きく二分されます。既製杭とは、あらかじめ工場で製造された杭を現場へ運び、打設する杭の種類です。場所打ち杭と既製杭についてはこちらのコラム(杭とは?目的や素材、支持方法の違いについて)で解説しています。
打込み杭工法
打込み工法は、打撃工法と振動工法に大別できます。打撃工法は最も古くから使用されている杭打ち方法です。その後、振動工法が開発されましたが、共通する原理としては、何らかの力を加えて杭を地盤に打ち込むというシンプルなものです。そのため、後述の埋込み杭工法のように、残土や泥水を発生させることなく施工が可能です。
打撃工法
打撃工法は、杭を所定位置に据えた後、ラム(重り)を利用して杭をハンマで打ち付ける工法です。かつては燃料の爆発力を利用したディーゼルハンマが用いられていましたが、大変な騒音と振動を理由に、油圧ハンマへと移行していきました。しかし、油圧ハンマを使用した打撃工法も現在では、より騒音や振動を抑え、高い支持力を発揮できる杭打ち工法が開発されたことから、ほとんど使用されなくなっています。
振動工法
振動工法は、振動を利用して杭を打ち込む工法です。バイブロハンマを用いて上下振動を発生させ、周辺地盤の摩擦抵抗を減らすことで杭の打ち込みを行います。打撃工法に比べ、騒音、振動を抑えることができるのが特徴です。また、バイブロハンマは杭抜きにも使用可能です。
埋込み杭工法
埋込み杭工法は杭の挿入前、あるいは杭挿入と同時にオーガで地盤を掘削し、孔内に杭を埋め込む工法です。孔内に根固め液や杭周固定液と呼ばれるセメントミルクを注入することで、杭を固定します。
中掘工法
中掘工法とは、筒状の杭の内部にスパイラルオーガを差し込み、掘削しながら杭を埋設する方法です。スパイラルオーガの先端部から圧縮空気を排出することで、杭中空部を通じて掘削土を地上へ排出します。中掘工法の中で最も一般的な拡大根固め工法では、所定深度まで掘削した後、スパイラルオーガ先端部から根固め液(セメントミルク)を噴射して根固め球根を築造し、杭先端部と密着させ、支持力を増強します。
プレボーリング工法
プレボーリング工法は、事前(プレ)にオーガで地盤を掘削(ボーリング)し、その後杭を埋め込む工法です。プレボーリングの代表的な工法であるセメントミルク工法では、オーガを用いて地盤を掘削した後、オーガ先端部より根固め液と杭周固定液(ともにセメントミルク)を注入し、その後、根固め液と杭周固定液が充填された孔内に杭を沈設し、定着させる方法です。
鋼管ソイルセメント杭工法
鋼管ソイルセメント杭工法とは、土(ソイル)とセメントミルクを混合して築造したソイルセメント柱の中に、表面にリブ状の突起がついた鋼管を埋め込み、定着させる工法です。リブ付きの鋼管を用いることで、ソイルセメントとの密着力を高めます。鋼管挿入のタイミングにより、同時沈設式と後沈設式に分かれます。同時沈設式の場合、鋼管を取り付けたオーガを用いて地盤を掘削します。掘削しながらオーガ先端部よりセメントミルクを注入し、孔内の土とセメントミルクを混合攪拌することでソイルセメント柱を築造します。所定深度まで達したところで、オーガに取り付けていた鋼管をソイルセメント柱内に埋設します。鋼管とソイルセメント柱が一体化し固化したら完了です。
回転杭工法
回転杭工法は、先端部に羽根のある杭を回転させ、地盤に貫入させる工法です。ネジのように地盤内に挿入していくため、残土が出ません。また、杭撤去時には逆回転させることで引抜きが可能です。
さいごに
前回のコラムから二回にわたり、杭打ち工法について解説しました。場所打ち杭と既製杭に分け、さらに施工原理別にご紹介しましたが、分類方法は様々です。中には回転圧入工法やプレボーリング併用打撃工法など、複数原理を組み合わせた工法や圧入工法を1カテゴリーとして区分けする場合もあります。工法原理を理解した上で、施工時には地盤の特性や環境条件を十分に考慮し、適切な工法を選定することが重要です。
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